【完】愛の血−超勝手な吸血鬼


「え……あの時のって、やっぱり……」


声が掠れて上手く喋れない。


確かに、あの時の男の子が椎名冬夜だとは思っていた。

だけど、何も言わないし。

ただ、ちょっと顔がいいからモテて調子にノッてる奴なんだ。

そっちの方の印象が強くて。


まさか、こんな形で言われるなんて想像もしてなかった。


「ぶっ!」


青ざめたあたしを見て、大笑いをした椎名冬夜は


「殺さないから、安心しろよ」


と付け加えた。


その言葉に何故かホッとしてしまう。


そんなはず、あるわけないのに。

頭ではわかっているんだけど、どうしてだろう。


あ、れ?


瞳が……。

ダークグレーに見えた瞳は、普通に黒くて。

やっぱり見間違いだったのか。


目の錯覚だったのか。

……わけがわかんない。
< 46 / 286 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop