【完】愛の血−超勝手な吸血鬼
「え……あの時のって、やっぱり……」
声が掠れて上手く喋れない。
確かに、あの時の男の子が椎名冬夜だとは思っていた。
だけど、何も言わないし。
ただ、ちょっと顔がいいからモテて調子にノッてる奴なんだ。
そっちの方の印象が強くて。
まさか、こんな形で言われるなんて想像もしてなかった。
「ぶっ!」
青ざめたあたしを見て、大笑いをした椎名冬夜は
「殺さないから、安心しろよ」
と付け加えた。
その言葉に何故かホッとしてしまう。
そんなはず、あるわけないのに。
頭ではわかっているんだけど、どうしてだろう。
あ、れ?
瞳が……。
ダークグレーに見えた瞳は、普通に黒くて。
やっぱり見間違いだったのか。
目の錯覚だったのか。
……わけがわかんない。