【完】愛の血−超勝手な吸血鬼
「お前、見ただろ?」
……え?
「あの日、公園で」
……。
言われる言葉で、鮮明に蘇ってくる記憶。
風もないのに、音を立てて揺れるブランコ。
そして気持ち悪いくらいにタイミングよく吹き出した優しい風。
横たわったパンプスを履いた足。
黄金色に輝く月。
その光に照らされた男の子。
『誰かに言ったら…殺すよ?』
その言葉。
「言うなって、俺言わなかったっけ?」
え?
足が動かなくなった。
だってそこには。
あの時見つめられた、ダークグレーの瞳があって。
また、あたしを見つめている。
「何ビビッてんの?」
口角をあげ、妖艶に微笑むその姿は、あの時のままだったんだ。