風に恋して
すぐに寝息を立て始めたリアの頭をそっと撫でる。

リアの記憶は少しずつ拘束が緩んできているようだ。レオに手を伸ばしてきたとき、今の状況に“あの日”を重ねて見ていると確信した。

レオはリアの髪の毛を一房掬って口付ける。

思い出して欲しい。

しかし、今の不安定な状態では植えつけられた記憶をうまく浄化できないかもしれない。それに……

(何か……)

確かに城で生活することで既視感から記憶の鍵が緩むことはあるはずだ。けれど、その外れ方が急な気がする。

特に、リアの口からレオの名前がこぼれるときや、今のように何か前と同じようなシチュエーションでぼんやりと記憶回復の片鱗をみせるときはいつもリアが混乱しているとき――不安定なときだということが引っかかる。

そういう状態で記憶が戻ってしまっても、本来の記憶と偽物の記憶の区別をつけられないかもしれない。

自力で思い出すというのは、その者自身が偽物の記憶を“偽物”だと認識し、納得しなければいけない。記憶を取り戻しても偽物を本物だと信じたいと願ったり、本物のほうを捨ててしまったりすれば精神の均衡は壊れ、簡単に迷宮へと足を踏み入れてしまうのだ。

(わざと、緩めている?)

エンツォが故意に呪文の威力を弱めているとしたら……
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