風に恋して
「申し訳ございません。リア様を混乱させるかとも思っておりましたが……呪いのことをわかっておられる以上、話しておいたほうが良いかと判断しました」

混乱はしている。だが、その一方で理由を知って納得したのも事実。

先代オビディオは早くに亡くなったということは、今のリアも知っている。だからこそ、レオは27歳という若さで王位に就いているのだ。

レオの婚約者という立場であったリアは、エンツォを苦しめる存在だったのだろうか……?おそらくはレオと笑って過ごしていた自分。オビディオとマリナ、レオとリア……エンツォの心の傷を抉る存在だった?

リアは自分の心臓に手を当てた。ヴィエント王国の王妃――それ以上の、重さ。自分の存在が誰かを傷つけていると考えたことなどなかった。

セストはそんなリアをしばらく見つめていたが、やがてテーブルの日記を手に取るとまた机の引き出しへと戻した。

「貴女も……本当は、お気づきなのでしょう?エンツォが、すべての糸を引いていると」

リアは何も言わなかった。

事実だったから。

最初から、気づいていた。エンツォの“気”が自分の中に入っていることに。研究室で記憶の渦に巻き込まれたときからずっと。

作られた想いなのだと、気づいていたのに。それでも心のどこかで、信じていたかった。見ないふりをしていた――
< 129 / 344 >

この作品をシェア

pagetop