風に恋して
「これも、私の推測になってしまいますが……エンツォは養成学校に通う前から自分の出生を知っていたのではないかと思います」

クラドールとして城に入れば厳重な軍の警備突破も問題なく、王族との接触――オビディオの診察をする機会もある。

「オビディオ様の診察を行った際に採血をしたのでしょう。親子鑑定で真実をハッキリさせたエンツォは、復讐をすることを決めたのでしょうね」
「ヒメナ様が、オビディオ様に捨てられたと思っているということですか?」

リアは止まらない涙を拭った。声が掠れてしまう。

「おそらくそんなところでしょうか。そのせいで、ヒメナ様と自分がカリストの元で苦しみ、ヒメナ様に至っては心を閉ざしてしまったのです」

それなのに、その妹と笑って暮らしていたオビディオ。エンツォを哀れんで城に迎え入れたと感じたのかもしれない。同情された、と。

そして、何も知らずに両親からの愛を受け、守られて、将来を約束されたレオ。幼い頃から苦しみ、血の滲むような努力をしてクラドールになったエンツォにとって、レオは最初からすべてを持っているように見えたのかもしれない。

城でのその光景は、彼の心にどんな思いを生み出したのだろう。

「兄弟であるはずの2人は、あまりにも違う道を歩んできたのです。オビディオ様が亡くなられて、おそらくその憎しみの矛先はレオ様に……」

リアはそれに利用されている。
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