風に恋して
クラドールとして欲しいのは本当だ、と言ったときのユベール王子の顔を思い出すと恐ろしくなる。あの美しい、整いすぎた笑顔の裏には何が隠されているのだろう。

「怒らせたお詫びに、と……カタリナの持っていた花束の花びらを私のグラスに……」
「花束?」

レオが怪訝そうな声を出す。

「私の快気祝いに、ノエ将軍からいただいたと言っていました」

新種の花が混ざってはいたが、普通の花束に見えた。呪文が掛けられていれば、リアはそれを感知できるはずだ。それとも、体調が悪いせいで感覚が鈍っていたのだろうか。

「私、その後グラスの水を飲んでしまって……そうしたら、だんだんと意識が、自分が、わからなくなって」

最後は声が震えた。涙が頬を伝う。

「怖かった――っ」
「リア、もう大丈夫だから」

レオはポンポン、と優しくリアの背中を叩いてくれた。それでも、止まらない涙……

すると、レオはいつかのように、瞼に口付けて涙を掬ってくれた。そのまま頬を伝って……唇が重なる。

ちゅっ、と。

触れるだけのキス。

「おまじない……効いたな?」
「はい……」

レオが微笑み、リアもそれに釣られて笑みを零した。少し見つめ合って、レオがもう一度リアをギュッと抱きしめてくれる。

その温もりと、リアに伝わってくる鼓動が心地良い。
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