風に恋して
「記憶は大丈夫か?」
「うん。元通りだよ、レオのことも全部思い出した」

リアがギュッとレオの背中に手を回して抱きついてくる。

「あのね、レオ」
「ん?」

レオはリアの髪の毛を梳きながら、彼女の話に耳を傾けた。

「……好き」

突然の告白。レオは息を呑んだ。

リアは、恥ずかしがって言葉にすることを嫌がる。レオが「俺のこと好きか?」と聞いても、「うん」としか言わない。「好き」と言ってくれたことは、レオの気持ちを受け入れてくれた夜と初めて肌を重ねた夜だけだと思う。

「ルカがレオの部屋に連れてきてくれたときにね、ちゃんと伝えようって思ったの。ルカのことも、言おうって」

結局、エンツォのことがあってレオは息子本人からその存在を知らされることになったのだけれど。

「怖くて、言い出せなかったの。でも、レオとの写真を見ていて、レオが私を想ってくれているんだって思ったら、私も自分の気持ちを伝えなくちゃって思えた」

リアがそっとレオから身体を離し、じっと瞳を覗き込んでくる。翡翠色の瞳に映る、レオの姿。リアは、ちゃんと自分を見ている。

「レオのこと、大好き。ごめんね……もう、絶対忘れたりしないから」

ゆっくりと、リアの顔が近づいてきて吐息が重なる直前……リアはもう一度「好き」と言ってくれた。そして唇が重なる。
< 283 / 344 >

この作品をシェア

pagetop