風に恋して
中庭に出ると、少し冷たい風がリアに吹き付けた。もうすぐ最も風の強い季節がやってくる。

ルカは楽しそうに笑いながら中庭の噴水に水しぶきをあげてみたり、木々の間を吹いて葉を揺らしてみたりして遊んでいる。

「リア」

それを見つめていると、後ろからそっと上着が掛けられた。首を捻ってみれば思ったとおりの人、レオが微笑んでいる。

「レオ。お仕事は?」
「とりあえず一段落ってところだ。書類整理は、だが。明日からいろんな人に会わなければならないから、午後は休むことにした」

レオがリアの身体を後ろから抱きしめる。

「身体が冷えている。部屋に戻るぞ」
「でも、ルカが……」

先ほど中庭に出てきたばかりなのだ。まだ遊び足りないだろう。

「ルカ!」
『んぅー、ぱー?』

ヒュッと風が2人のところへと舞い戻ってくる。

「今日は寒いからここまでだ。いいな?」
『んー』

納得したような返事をして、ルカの風はパチンと弾けて消えた。

「リア、体調が良ければ少し話を聞かせて欲しい」

それを見届けて、レオが静かに言った。

きっと仕事もそのために一段落つけたのだろう。リアを迎えに来てくれたらしい。リアはそれにしっかりと頷いてレオの手を取った。
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