風に恋して
レオの部屋に戻ると、セストが部屋にいて紅茶を淹れていた。

「すみません。せっかくのお休みですが、いろいろと確認したいことがありますので」
「ううん。私も話そうと思っていたから」

セストがお茶をそれぞれの前に置き、向かい側のソファに座った。淹れ立ての紅茶からゆらゆらと漂う湯気を見つめて、リアは口を開いた。

4カ国会議の日の朝、ルカがリアをレオの部屋へと導いたところから……

「やはり、ユベール王子はすべてを知っていたのですね。それでエンツォを焚きつけた」
「エンツォもオビディオ様のことを誤解していたみたいだったから……」

だから、ユベール王子の言葉を信じたのだ。母親は、弄ばれたのだと。

「それから、レフレクシオンの呪文だけど……ユベール王子とエンツォが一緒にいると呪文の使用中も気を隠せるの」
「それは本当か?」

リアの言葉にレオが驚きに目を見開いた。

「ユベール王子の気は光属性でしょう?だから、鏡の反射を利用するの。エンツォの風の壁に薬を使って鏡の効果を付加できる」

話には聞いたことがあったし、先ほども研究室できちんと確認してきた。物体にかけるとその表面を鏡のように変化させることができる薬は、高度な技術を求められるけれど作れないわけではない。闇取引ではかなりの高値がつくと言われている。

「たぶんそれを少し改良していて、飲んで呪文を使うんだと思う」
「飲んで、ですか?」

セストが眉間に皺を寄せる。それはそうだろう。いわゆる鏡を作る薬だ。いくら改良してもアルミニウムなどの金属は入れなければならないはず。少量ならわからないが、人間1人を覆うほどの壁に使うために飲む量を考えると安全とは言い切れない。
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