風に恋して
レオはフッと少し勢いをつけて息を吐き出すとソファに座り直した。

「もう1つだ。どうしてエンツォはお前をこの城に残していった?」
「うん……それは私も気になっていたの」

リアが覚えているのは、エンツォが追憶の呪文を唱えたところまでだ。その後は混沌とした記憶の中を彷徨っていた。

「イヴァンが自分のところにルカ様がいらしたと言っていましたよね?ルカ様が何かされたのでは?」
「そう、なのかな?」

確かにそういう考えもあるけれど、あのとき疲れて眠ってしまっていたルカが回復するには時間が短かったと思う。イヴァンのところにきたときも、弱々しい泣き声だったと言っていた。

肝心なルカも今は眠っているのか何も言わない。

(エンツォ……)

――「…――目的のためならどんなものも犠牲にできる」

その言葉が、リアの頭の中でリフレインしている。

“どんなもの”も……

リアの思い過ごしなのだろうか――?
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