風に恋して

夢と約束

「お姉様っ!」

その日、日も高く昇る頃に帰ったヒメナを迎えてくれたのは妹のマリナだった。泣き腫らした目をして、ヒメナの顔を見るとまた涙が頬の道筋を増やしていく。

「マリナ、そんなに泣いてはいけないわ。明日はお城へ行くのでしょう?」
「嫌!嫌です!どうして……どうしてなの?こんなのひどいわ!」

父親の策略にハマッてしまった自分のせいで、マリナにもつらい思いをさせることになってしまった。

昨夜……家族で食事をするからと言われて連れて行かれたのは、カリストの屋敷だった。マリナや母親は後から来るという父親の言葉を信じてついていってしまった、バカな自分。

食事は確かに振舞われたけれど、それだけで終わるはずがなくて。

ヒメナは馬車からカリストの屋敷が見えた時に覚悟を決めていた。思ったよりも冷静でいられた。

もし、自分がオビディオの元へ嫁げばマリナがカリストに嫁ぐことになるだろう。あまりいい噂を聞かないカリストのもとでより、優しいオビディオのもとで大切にされたほうが幸せだと思ったからかもしれない。

妹が幸せになれるのなら、自分はどんな痛みでも引き受ける。

父親は母親にもマリナにも黙ってこの計画を実行しただろう。もしこの計画を知られたなら彼女らの反対にあうのは目に見えている。

けれど、賢い妹のことだ。昨夜1人で帰宅した父親と彼の態度からすべてを理解し、1人泣いて夜を明かしたのだ。

「マリナ、もう泣かないで?私は平気だから」

ヒメナがどれだけ言っても、マリナは「嫌」と繰り返し、しばらく玄関でヒメナにしがみついて泣いた。

ヒメナの分も……
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