囚われの華
「私も好きなお店なのでそう言っていただけて嬉しいです。
こちらのお店を選んで良かった。」
そういって微笑む遥に水島夫妻は癒される。
最近、彼女はパーティーなどほとんど出席することがなく、会うことがなくて心配もしていたのだ。
「本当に遥ちゃん、久しぶりに会えたわ。
こちらも忙しくてなかなかお伺いできなかったし。
久しぶりに遥ちゃんのバイオリン、聞きたいわ。
あの時よりもっと上手になられたんでしょうね。
また、機会があったら聞かせてね。」
そう言ってくれる夫人に
「ありがとうございます。機会があればぜひ。」
そう答える。

機会があるとは思えないが。
だって、わざと会わないようにしていたのだから。
夫妻に、ではなく、蓮に会わないように。
そんなは遥の努力は唐突に破られる。

「ただ今戻りました。」
懐かしい、本当は会いたい、だけど会えない人の声が遥の耳に届く。
「お帰りなさい。蓮。リビングにおいでなさい。」
そう夫人が言うとしばらくして足音が近づく音がしてきて。
「お父様、お母様ただ今戻りました。」
リビングの戸が開き、声が届く。
「……」
まさか、会うなどと思わずにいたので、予想外の出来ごとに固まる遥。
「いいところに戻ってきたわ。蓮、久しぶりに会ったでしょう?
遥ちゃんが尋ねてきてくれたのよ。」

ニコニコと嬉しそうな夫人、旦那様。
お二人は私たちの間の緊張感に気付いていない。
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