囚われの華
「着きました。水島様のご自宅です。」
そう告げられて降りたら、連絡が来てたのだろう。
水島家の執事の在原が出迎えてくれていた。

「西園寺様、ようこそ。旦那さまと奥さまがお待ちです。」
「ありがとう。案内、よろしく頼みます。」
そう告げて案内される。
客間に通されると、確かに水島家当主夫妻が待ち構えていて。

「ようこそ。遥さん。久しぶりだね。」
そういって歓迎してくれる夫妻に
「突然の来訪お許しください。
このたびは私を水島本社に採用いただきましてありがとうございます。
お礼と挨拶を、と思いまして伺いました。」
そういう遥に
「私たち相手にそんなに改まらなくていいのよ。遥ちゃん。
蓮のように気さくに話して頂戴。」
なんて言われえて困ってしまう。

その蓮とはあの後会わなくなって久しい。
今日も会う事にならぬようにとどこかで願いながら伺ったくらいだ。

「ありがとうございます。そのお気持ち、嬉しいです。
これ、つまらないものですが、どうぞ。」
そういって差し出した菓子おり、受け取ったその手で包みを開き、喜ぶ当主の妻の様子にホッとする。

「まぁ、風月堂さんのお菓子だわっ!!ありがとう。遥ちゃん。
大好きなのよ。ここのお菓子。」
そう言われ、
「妻もこういってるんだけどね、この私も好きなんだよ。
蓮に言わせると甘いもの好きそうに見えない、らしいけどね。
余計な気を使わせてしまって申し訳ないね。遥ちゃん。」

そう言われて。

「就職のことはね、気にしなくていいんだよ。
彰から言われなくてもこちらからも打診しようかと思ってたんだ。

彰の会社に就職するってことでも、他にしたいことがあるってわけでもないならね。

だから気にしないでいいよ。

それどころか、逆に遥ちゃんの重荷だったら申し訳ないことをしたかと思うくらいなんだよ。」

そう言われて、優しい水島夫妻の気持ちに嬉しさがこみ上げた。
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