囚われの華
「遥、蓮君たちとあちらで遊んでいなさい。」

子供たち用の遊戯室を指さして父が言うので

頷いた遥に蓮は

「一緒にその部屋に行ってもいいかな?」
と尋ねる。

遥は何も言うことが出来ず、ただただ頷くだけで。

蓮の姿をみて幼いながらも遥の鼓動は高まっていた。

今思えば、これが遥の初恋だったのだろう。

その後、会う機会が増えるにつれて、遥は蓮をどんどん好きになっていった。

まだ、初恋という自覚はないままに蓮に懐いていく遥。

蓮も決して嫌がることはなく、いつも遥と遊んでくれていた。

そんな二人を双方の親たちは優しい笑みで見つめていたのだった。

もしかしたら、両親たちは将来的に二人を結びつけることを考えていたのかもしれない。

だが、そんなことはこの当時の二人には知るはずもなく、ただただ楽しい時間を過ごしていた。

そんな楽しい時間が音を立てて崩れた日を私は忘れられない。

いや、忘れられるはずがない。

今までの優しい時間は幻なのだと気づいてしまったのだから。

< 7 / 41 >

この作品をシェア

pagetop