囚われの華
車が颯爽と動き出す。

だがしばらくの間、どちらも言葉を発さず、重苦しい雰囲気が辺りを包んだ。

「何を考えてるんだ?」

そう蓮が遥に言ったのは遥の実家西園寺家まであと数百メートル手前の場所を通り過ぎた時で。

だが、遥は何も言おうとしない。

聞いていて答えないのか、聞こえなかったのか・・・・・

後者だと思いたいと思いつつ、蓮はため息をつき、運転に集中した。


遥は何も考えてなかったわけではない。

むしろ考えていた。

遥と蓮が初めて会った日のことを思い出していたのだ。

あれは確か私が小学校入学前だから5歳のころだろうか。

西園寺家で催されたパーティーに父と旧知の仲である水島夫妻に連れられて蓮も招かれていた。

普段は大人だけのパーティーなのだが、西園寺家の一人娘のお披露目もかねていたのであろう、遥と年齢の近い招かれた家の令息、令嬢も集まったのである。

「よく来てくれたね。ありがとう。」

握手しながら挨拶を交わす父を母の後ろからジッとみていた遥。

「この子が?蓮君かな?」

と父は水島夫婦に連れられた蓮の方を向くと、水島彩人の妻である恵梨香が蓮に向かって

「ご挨拶なさい。お父様が公私ともにお世話になっている西園寺夫妻よ。」

と促す。

「初めてお目にかかります。水島蓮と申します。」

きちんと挨拶した蓮に彰の妻、君香は笑みを浮かべて

「まぁ、挨拶がきちんと出来てすごいわ。蓮君、今日は楽しんでいってね。」

と笑みを浮かべて言う。

そして自分の後ろに隠れている遥に

「遥、きちんとご挨拶なさい。お父様のご友人の水島夫妻よ。」
と言いながら小さな体を引っ張り出した。

モジモジとしていた遥が

「はじめまして。西園寺遥です。」

とようやく言った時、両親はホッとした表情を浮かべ、水島夫妻は

「遥ちゃん、初めまして。よろしくね。」
と言ってほほ笑むのだった。

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