跡目の花嫁さん~家元若旦那の極上のキス~
琴子様が俺たちを邸宅に招き入れてくれた。


「嗣成(ツグナリ)さん、東京から緑川様がお見えどすえ」


琴子様は俺たちを現・家元・氷見嗣成さんに引き合わせてくれた。


「どーぞ」

障子戸の向こうから聞こえる声は不遜な感じ。
琴子様は障子戸を開けて、俺たちを部屋に入れた。



長い女性のような黒髪を後ろで一つに束ね、父さんと同じ紬姿の若い男性。


「お茶を用意させますので…ごゆるりとなさってください」


「はい、ありがとうございます」
琴子様は部屋を出て行った。


嗣成さんと顔を合わせるのは5年ぶり。


「久しぶりだな…和也…お前…結婚するのか?」


嗣成さんは俺よりも6歳年上の31歳。独身。


「はい、まぁ」


「ふーん」

嗣成さんは張り付くような目つきで桃を見つめる。
隣に座る俺は不愉快だった。

目の前には生けかけの花。

花材は水仙。


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