黒の森と、赤の……。/ ■恋愛シミュレーションゲーム□
そんな最中でも、良雄に打たれた箇所は、未だに衝撃の余韻を残し、痛みを生み続けていた。

まるで酷い火傷か何かのように、熱と痺れを伴って、痛覚を刺激する。

床から起き上がることもできず、バスの天井をただ仰ぐ、俺の体。


その体を、ふいに影が覆った。


ぼんやりとまぶたを開けば、それが、大きな人影であることがわかる。

十字の輝きを放つ、琥珀色のバスの照明を背負って、その人影は、俺の傍らに立っていた。


影から、声が降り注ぐ。


「……無様だなぁ、転校生……。
低能のくせに、この俺に喧嘩なんてものをふっかけてきやがってよぉ…。」


…倒れている負傷者(じぶん)に対して吐かれた、罵るような、蔑むような、そんな心無い台詞。


だけどその声は、ほんの、ほんの少しだけ…

期待を裏切られたような、悲しみを帯びたような

…そんな音色を、していた。


台詞の内容とは矛盾した、その音色の原因…奥深くに潜む真意について思考を巡らせる前に、


“ それは ” 、起きた。


<良雄好感度、-1(※)>


→【65】

/(※) 好感度の説明は、本編の直前にあります。/
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