ジルとの対話
Chord D♭
ジルはソファーに座り、ベルリォーズからデージーの報告を請けた。
「ベルリオーズありがとう。デージーはいつも正しさを持って訴えかけてくるものだから、僕でも言いくるめられたかもしれない。」
ジルが項垂れて言った。
「あのじいさんだって、わかっていてるんじゃない。なんかわざわざ俺にチェロはどおかなって。なんか、馴れ馴れしく話し掛けて来たよ。」
「あんまりデージーの事を軽く言っちゃ駄目だよ。尊敬すべきものだから。」
ジルが、重々しく言った。
「ジルより俺の方が上だってさ、執事じゃもったいないって。どうする?」
ベルリオーズはジルの項垂れた顔を覗き込んで、意地悪そうに微笑んだ。
「バカな事を言うな。」
ジルがベルリォーズの頭をどけて呟いた。
「魔法使いになれるって。」
「そう言って自分の執事にするんだよ。あぁ言ったヤツは。」
ジルは憎々しく言った。
「ふぅん」
ピアノの鍵盤に頬杖をつくとベルリオーズはため息をついた。
「本当に生きているのが正しいのかな。彼のように柵や建前で生きるならどんなに味気無いだろう。俺はデージーが正しいと思う。自己満足で苦しみに縛りつけて、ただみているだけなんてどんなに無責任だろ?俺はキースが虚しさを克服出来ないなら、いっそ黄泉の国に送った方が良いと思う。」
「ベルリオーズ僕でもそれはわかっているんだよ。しかしキースにはやり残した事があるんだ。まだ、彼を楽にさせる訳にはいかない。」
「この世なんてやりっ放しじゃない人間なんかいないさ。例外はないよ。いったい何をやり残した事があるんだ。」
ベルリオーズは訝しげにジルを眺めた。
「音楽を造ることさ。彼は人間だが我々の影で偶々人間に宿ったに過ぎない。ただ、なにか自分自身の魂の断片をこの世に残す事で彼は報われる。」
「そんなことならもうやってるよ。」
「いやただの音楽じゃない、天を動かす音楽だ僕がやっているような。」
「危ないじゃんそんなのハリケーンが来たらどうするの。」
ベルリオーズが顔をしかめて言った。
「僕が一緒に天を操るよ大丈夫だ。」
「うまくいくと良いね。」
ベルリオーズが小さくため息をついて、空を眺めた。
雲はただ生命を抱いてどこまでも、無表情だった。

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