ジルとの対話

キースは何処へ

解決しようと思ったが、その解決する本人をジルは見失った。
このところ全く姿を現さなかった。
もう死んだのかと、生命をもあやぶまれた。

鏡の道をたどってキースの面影を探した。
そこには、フランツが歩いていた。
フランツはキースの周りを奇妙な動きで遊んだ。
キースは夢の人だったのだろか。怪しみ、空疎な時間を過ごしたのだろうか。
木の幹に抱きつき、フランツは考えあぐねていた。
「なにしてる。」
デビットがフランツに尋ねた。
「キースはどこへ行ったと思って。」
フランツがデビットを見つめて言った。
デビットは地面に座り込み、少しわらった。
「どこだって良いじゃないか。キースの行きたいところに行かせてやれよ。」
デビットは微笑みながら言った。
「でもようやく見つけた僕の影だから、もう一度会いたいんだ。」
ジルがデビットに言った。
「なあ、キースはジャンキーなのかい?」
「そうだ、アヘン中毒だ。マリファナ、スピードなんでもやってる。肉体はもう棄てるしかない。治療したり、何か手はないだろか。悪魔の君に聞きたい、どうしたらいい。」
ジルがデビットに訊いた。
「中毒しているのは、本人であって俺じゃない、キース自身が治る意識がないからどうしょうもない。」
悪魔は首をひねった。
「なんであんなに自暴自棄なんだろ?」
ジルはうつむいた。
「人は誰も本当には相手を成功させたりしない。自分が、どれだけ得するのかで生きている。愛情も情もない、平気で見棄てる。こことは全く違う。正に弱肉強食で、見返りのない奉仕を強制される。沈んだ心に鞭打って、ただ生きるだけなんだ。わかるか?ジル。お前に人間の強欲と苦悩が。」
悪魔の言葉がキースを優しく守るようで、不思議だった。ここにいる誰よりもデビットが彼を比護していた。







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