魅惑のくちびる
「ハハ。まぁ北野ならどんな仕事でもサクサク片付けていきそうだもんな。大北課長も未だにお前の名前を出すほど信頼していたしな。」
きっと雅城はそんな褒め言葉も上の空。
だって、いつもはかけないキャベツにまでソースかけてるもの。
「それより、今日はまた珍しいメンバーでのランチだな。どういう風の吹き回しだ?」
同じ会社で、しかも以前いた課の人と食事に出るのは珍しくない。
仮に、わたしと松原さんだけでランチに行ったところで特におかしなことなんて、ないはずなんだ。
雅城はいろいろと、気にしすぎなんだよ。
「ん? あぁ、もう本題に入らないといけないわけね、了解。
……実はさ、何度璃音ちゃんを飲みに誘っても、一向に首を縦に振ってくれないのよ。
そこで北野、お前の力を借りたいってわけさ」
雅城の方を、恐る恐る見る。
予想通り、顔がひきつってる――。