魅惑のくちびる

ベージュと茶でまとめた寝室の主役、ダブルベッド。

いつもここで枕を並べて、眠りにつく瞬間がたまらなく幸せに感じている。

壁側にはりついて眠るくせのあるわたしにくっつこうとして、雅城までベッドの隅っこにくるから、広いベッドの片側に枕が二つ寄り添って並んでいる。


おやすみのキスは、欠かしたことがなかったのにな。

布団を持ち上げて足を入れると、冷ややかなシーツの温度が思わず身震いさせる。

二つの枕が並ぶベッドに、一人で寝るには広すぎるって初めてわかったよ。


枕から雅城の香りがした。

ぎゅぅっと抱きしめると、涙がこみ上げてきた。

ねぇ……こんなの、いやだよ。

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