女王さまの憂鬱
わたしもさくらも、部員数50名前後のオーケストラサークルに所属している。

楽器はヴァイオリン、彼女もわたしも中学時代から習い始め結果として現在に至るまで惰性で続けているにちがいはない。

当初からオーケストラに入ろうと、ほかのサークルの勧誘などには目もくれず、入部届けを出したわたしとは対照的に、彼女は最後まで馬術部にするかどうするかを悩んでいたそうだ。

けれど、月8万というあまりに高額な部費を考慮し、月2000円のこちらにしたということだった。

彼女は、本人曰く大の人見知りで、確かサークル初日に教室の隅にちょこんと座っていたことを思い出す。

わたしが声をかけなかったら、きっと彼女はあの場所を定位置としてひっそりと参加していただろう。

けれど、ある種の確信を持って言えることだが、わたしが声をかけずとも、きっと直ぐにさくらはハーレムを作り上げたに違いない。

結果的に言えば、当たらずとも遠からず。

一年の秋となる今の時点でさえ、既にサークルの男子の少なくとも二人は彼女にアタックしていたし、あと一人も密かに思っているという噂だ。

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