巫女と王子と精霊の本




「鈴奈……。あなたに会えてよかった。私と同じ……」



―パァァァァッ



今度は光が私とエルシスを包んだ。



「鈴奈」

「エルシス、帰ろう」



私は安心させるようにエルシスに笑いかける。



「音羽さん…私も、あなたと出会えて良かった。音羽さんは…」



元の世界へは帰らないんですか?と言い掛けて、口をつぐんだ。



私は……いつかは帰らなくちゃいけない。
でももし……この世界にいられたら……



「私は、ここで生きることを選んだの。あなたも…選ぶ時が来る…わ……」


私にも……選ぶ時が来る……
でも、私は……エルシスとお姫様が結ばれる世界に居続けるなんて…
辛くてきっと出来ない……


「さよなら、私達の……女神…」



ハミュルと音羽の笑顔を最後に、私達は光に呑み込まれた。





――――――――――――――――
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「んっ…………」


「ここ……は……」



目を覚ますと私とエルシスは先程の丘に横たわっていた。
互いに抱き合うように寝転んでいる。



しかし、そこにハミュルの花はない。


そうか……境界が完全に閉じたんだ。
もうあの二人には会えない……



「長い旅をしていたみたいだな」



エルシスは笑う。


「お前と出会ってから、不思議な事ばかり起こる」


「あはは……いつも巻き込んでごめんね」




いつもエルシスは私に巻き込まれてる。
それが自覚できるだけに申し訳ない。



「いや、むしろ楽しいぞ。まだまだ俺の知らない世界があるんだと思うとな、わくわくする」



エルシスはまるで子供のように無邪気に笑う。



「お前と出会えて良かった。お前は俺に新しい世界をくれる」


「エルシス………………」


それは、私も同じ気持ちだよ…
あなたは、私に新しい感情や経験をくれる。
私にとっては、新しい世界だよ……




もし、私にもこの世界か、わたしの世界かを選ぶ時が来たとしたら……



「鈴奈………」


エルシスが笑いかけてくる。
その笑顔に笑みを返しながら考える。



私は……どちらの世界を選ぶんだろう………







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