-Lost Japan-失われし愛国
「朝鮮に送っておいた調達員が中々良い武器を持って来たぞ。TNTなんて実用的だしな。」


「もう直だな。俺らの人生一番の大舞台だ。」


「ああ、俺らが主役だ。日本の旗をへし折ってやるのさ。」


「…ああ。」


中国奪還を企ててから俺達はずっとこの廃れた地下室で作戦を練って来た。
厳しい労働や飢えに命を奪われていく同士達も数え切れない程見て来た。


父、母、妹、皆俺を置いて死んでいった。


父は初めて中国奪還に立ち上がった人物で指揮官の経験からか戦いは有利になると思われていたが、結果は作戦決行の前日に本部を奇襲されて戦死。
日本政府の内通者に作戦を横流しされたのだ。


母は父の無念を心の奥に隠して俺を庇って最期は病に倒れて、追う様に乳飲み子だった妹も飢えで死を迎えた。


俺は神を信じない。


神を崇めて何になる?


天国に行けるなんて、死んだ後に興味はない。


神が病を治すか?


神が腹を満たしてくれるのか?


神は人を平等に扱うのなら、この地は何と説明するのだ。

いや、日本という国を何故滅ぼさない。


──…神を信じていた、

──…父を、

──…母を、

──…神は見捨てた。

クソ野郎…。
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