華の涙






ここに売られてきた時から

新造の時まで…


定吉様には迷惑ばかりかけ、

よく八つ当たりもしたものだった




初めて泣き顔を見られたのも

定吉様だった。



始めて私を励ましてくれたのも、

定吉様だった。






「もう…会うことはありんせんが…お幸せになっておくんなんし」





それだけ言って定吉様に一礼し

自分の部屋へと戻っていく






「幸せに………か」





ポツリと定吉が呟いた







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