secret name ~猫と私~
すっかり暗くなった帰り道。

今度のイベントPRの打合せをしていたら、つい遅くなってしまった。
今日は本当に忙しい一日だったと笑いながら、駅へ向かおうと会社を出た2人の前に、1台のバイクが停まる。

真っ黒い車体に、鮮やかなグリーンの引っ掻き傷のようなペイントがワンポイント。
尖鋭的なフォルムで速そうなバイクだが、大型自動二輪免許が必要だろうか。
後ろには若干不釣り合いな、ヘルメットが入りそうな大きさのケースが付いている。
佳乃はバイクに詳しくないが、乗っている人物には合わない大きさなのは分かった。

「ノーヴェ・・・」

「え?!」

セッテの姿を確認したのか、艶のない真っ黒なフルフェイスのヘルメットを取る。
中から出てきたのは、彼の言った通り。

「ノーヴェさん・・・」

呼ばれて、小さく頭を下げる。
細身でおとなしそうな彼女からは、バイクで疾走しているところなど想像できない。

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