secret name ~猫と私~
佳乃とセッテがノーヴェに近付くと、彼女はまたがっていたバイクから降りてスタンドを立てると、車体と同じ色のヘルメットを抱えた。

「・・・今日は、帰るんやな?」

いつもとは違う少し強い声色で、セッテはノーヴェに確認する。
鋭い視線なのに、どこか不安な色が見え隠れしていた。

ノーヴェは小さく頷き、ヘルメットをサイドミラーに被せて、後ろのケースから缶コーヒーを2缶出す。
謎の行動を黙って見守っていた佳乃とセッテに、何も言わずに1缶ずつ手渡し、彼女はまたヘルメットをかぶる。
突然のことに、思わず受け取ってしまった。

「じゃあ。」

ヘルメットの中から、くぐもった声。

エンジンをかければ車体に見合う排気音だったが、暴走族のようではなく、不快は感じなかった。
そのままノーヴェは走り去り、後には呆然と見送る佳乃と、どこかほっとした顔のセッテが残される。

「これ・・・」

「あいつなりの、詫びやねん。受け取ってやってや。」

何か詫びられるような事を、されただろうか。
むしろ、徹夜でサーバーを直してくれたのだから、礼を言うのはこちらの方なのに。

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