secret name ~猫と私~

もう、恋は出来ないだろうか。

そんな考えが頭をよぎる。
今までなら、“そんなものは仕事の邪魔だ”と一蹴してきたが、今は違うような気がした。

自分の弱さを受け入れ、支えてくれる人に出会いたい。
そしてその人を自分も支え、お互いに成長しあえる関係になりたい。

そう思えるようになっている。

(彼の、お陰なのかな・・・)

思い出にするには、新し過ぎる記憶。
脳裏にはまだ鮮明に、彼の笑顔が蘇る。

「高村課長、この案件ですが、お目通しお願いします。」

呼ばれて顔を上げれば、部下がデスクの横に来ていた。
渡された資料を受け取り、自然に笑顔を向ける。

「わかったわ。ありがとう。」

あれから佳乃は、自分でもわかるぐらいに、柔らかくなった。

< 237 / 259 >

この作品をシェア

pagetop