secret name ~猫と私~
頷いた彼女はすぐに無表情に戻ったが、なんとなく気になってしまう。
年齢も近そうに見えるし、同期入社なのかもしれない。猫にそういう概念があるのかは、謎だが。

時間が無いのに何故か質問を続けたくて、佳乃が次の言葉を探していると、ノーヴェの携帯が震えた。
一礼して彼女は携帯を手にし、通話ボタンを押す。

『スマン!壊した・・・会場に来てくれ!』

大きな社長の声が、佳乃にも聞こえた。

「了解。」

大きな声に顔をしかめるでもなく、淡々と。
初めて、ノーヴェが佳乃の前で声を出す。
しゃべれないわけでは無かったようだ。

社長が何を壊したのかは分からないが、声から焦りを感じる。

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