secret name ~猫と私~
用件だけであっさり通話を切り、一礼して、ノーヴェは去って行った。
ほとんど声は出さないものの、一応の礼儀はあるらしい。

今まで彼女が歩いたりしているところを、見た事が無かったので気が付かなかったが、歩くたびに金属音がする。
ジャケットの下から見えたポーチに、精密ドライバー等が入っているのだろう。

セッテが言っていた、“機械が得意な猫”と言うのは、ノーヴェの事かもしれない。
いつも機械をいじっているようだし、機械に嫌われている社長に、ピッタリのサポーターだろう。
佳乃はそこまで機械に強くないので、素直に感心しながら、同時に感謝もした。
彼女が社長の壊した機械を直してくれなければ、会社の損害は凄まじいことになっていたはずだ。
それくらい、社長は機械と相性が悪い。

ノーヴェの背中を見送った後、佳乃も早足で会場へと歩いて行った。
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