secret name ~猫と私~
猫にお休みを与えましょう
会場に戻ると、スマートフォンコーナーの前で、社長が頭を下げていた。
彼のまわりには顔見知りの取引先の社員がいて、笑いながら社長を慰めていてくれるので、大きな問題にはならなそうだ。
佳乃は少しだけほっとした。

壊したのはきっと、展示用のスマートフォンなのだろう。

(ほんと、なんでそんなに壊れるんだか・・・)

我が社の最大の疑問だと、小さく溜め息を吐く。
会場の隅の方を見れば、やはりノーヴェが黙々と作業をしていた。

「高村主任、受付リストに記載の方々は、全員会場に入られました。」

後ろから聞き慣れた声をかけられ、振り向けば受付のチーフを任せていた部下がいた。
その面持ちは、普段よりも緊張で固くなっている。

「ありがとう。まだ飛び入りでどなたかいらっしゃるかもしれないから、一人は
受け付けに残ってもらえる?」

「はい、わかりました!」

佳乃が穏やかに応えると、少しだけ彼女の肩の力が抜けるのが分かった。
ハキハキとした元気な返事にうなずいて、部下と同時に、次の仕事にとりかかる。
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