secret name ~猫と私~
「毎日朝来て、朝食とお弁当作って・・・仕事行って。夜は夕食作って帰ってく。」

3人の手が、完全に止まった。
手だけでなく、表情も固まってしまったが。

「・・・あんた、ほんとにそれで何も無いわけ?」

恐る恐る口を開いた優子に、頷く美穂と香里。

「無いでしょ。仕事なんだし。」

「部屋に、上げてるんだよね?」

「上げてるっていうか、上がってくるっていうか・・・」

「ホントにそれで、ときめいたりしないの?強引でも、ただしイケメンに限るって言葉、あるぐらいなのに?」

「もー、無いんだってば!!」

2杯目のビールを飲み干し、今度は自分で追加を注文する。

佳乃を見る友人の目は、ことごとくつぶされていくロマンスの欠片に、ガッカリしていた。
家事と子育てに追われ、ときめきが無いのだという美穂と優子は、特に。
ドラマの様な恋愛のできる可能性を持つのは、もう佳乃しかいないのだと、力説してくれた。

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