secret name ~猫と私~
佳乃も一応肩書のある役職なので、時間ギリギリできたものの、一番前でそれを出迎えた。
横には、他部署の課長や主任が並んでいる。
段などは無いので、目の前を歩く社長と目が合い、小さく会釈した。
一歩後ろに居たセッテも、同様に会釈したのが気配で分かった。

今日はさすがに、社長の後ろにノーヴェはいない。
それどころか、会議室のどこにも居ないようだ。
存在感は薄いがあの容姿なので、いたらすぐに眼を引くだろうに、軽く見回しても見当たらない。
いつの間にか、社長とノーヴェは佳乃の中でセットになっていた。

「それでは、全体朝礼、ならびに異動辞令を行います。」

マイクを通しての、社長の声。
ノーヴェのことはすぐに忘れて、佳乃は背筋が自然と伸びていた。
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