背中を合わせて【完】
「使えそうだったら使って。あげるから入らなかったら捨てていいから。」



それだけ言うと足下にあった缶にタバコを入れて、缶を持ち上げる。


「またね。家まで帰れなさそうだったら救急車でも呼びなよ。」



そんな冗談を言ってタバコの入った缶をもったまま背中を向けた。


今日は男の背中が見えなくなる前に視線を外して帰る準備をする。



(もう6時過ぎてるし、早く帰らなきゃ。)



手のひらからはもう血は出ていなかったから、もらった絆創膏をポケットの中に入れた。


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