Un chat du bonheur
彼には、何もなかった。
家族とやってきたこの街で、家族は火事で死んでしまった。
父親も、母親も、妹も。
自分だけ置いていかれたのだと、そのとき思った。

神様に、捨てられたのだと。

そんな時、悲しそうな顔をした女の人が、灰色の街を歩いていた。
何もかも色を失ってしまったこの街で、途方に暮れた女の人。

自分と同じなのだと思った。

だから、自分は捨て猫になろうと思った。




「だから…俺には、何もない。この街も、空も、人も…君は、灰色と言っていて。俺もそうだから、同じだなって思った」

語られる言葉は、レアの心に染み込んでいって、大きな波をたてた。
そっとフェリクスの顔を見つめると、彼は笑っていた。


「フェリクス…」

「泣かないで、レア。俺、レアが大切だよ。レアだけが、俺に光をくれた。レアが、俺に生きていく意味をくれたんだから」

「あなたのほうが私を見つけてくれたのに…」

レアはフェリクスの腕の中で泣きながら、抱きしめた。


「君が拾ってくれてよかった」

「あなたを拾えてよかった」

そう言って微笑み合うと、二人はそっと手を握り合った。



ここから始めていこう。
そう誓い合うように。


「あなたの、名前は?」


初めて出会ったあの日の様に。
ここから始めていこう。



もうすぐ始まる、虹色の明日。






end
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