Un chat du bonheur

act.2









翌日は、予想に反して快晴だった。
途端に蒸し返す強烈な暑さに、フェリクスは呻きながら身体を起こす。
隣では、レアが安らかな寝息を立てながら眠っていた。

「相変わらずねぼすけだなぁ…」

起きてしまったものは仕方がない。
フェリクスはのそりとベッドから這い出ると、コーヒーメーカーをセットして窓を開けた。


時間を見れば午前10時。
とっくに平日の街は人通りもまばらになっていて、たまに通る車の排気音だけが聴こえてくる。


コーヒーが落ちると、レアが小さく身じろぎする音が聞こえてきた。


「ふぇりくす…?」

寝ぼけているのか、まだ夢の中なのか、はっきりしない声でレアが手を伸ばしている。
フェリクスはレアの傍まで行くと、レアの手をぎゅっと握った。

「どうしたの、レア」

「うう…コーヒー飲みたい…」

「まず起きないと」

フェリクスはレアを助け起こしながら微笑んだ。
ベッドの上で身体を起こしたレアは、やっと目が覚めてきたのかフェリクスの顔を見つめた。

「おはよう、フェリクス」

「おはよう、レア」

お互いに声を掛け合うと、フェリクスは自分の淹れたコーヒーをレアに差し出した。
レアはそれを受け取ると、満足したように一口飲んだ。

「今日どこ行こうか」

「お散歩でもいいよ」

いつまでもダラダラとベッドでそんな会話をし合う。
レアは少しだけ考えると、思いついた様に顔を上げた。


「ね、フェリクス欲しいものない?」

急に何を言い出すのかと、フェリクスは首を傾げる。

「どうしたの急に」

「だって、もうすぐあなたがここに来てから一年なんだもん。何かお祝いしようよ」

「えー、急に言われてもなぁ…じゃあ、レアは何かないの?」

逆にフェリクスが問い返すと、レアも困った様に首を捻った。

「うーん、改めて言われると困るなぁ…」

二人で暫し思案すると、唐突にフェリクスがあっと声をあげた。


「俺、欲しいものあった」

「え、なに?」
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