戦国より愛を込めて 【六花の翼・番外編】
博嗣は、奥二重の目をわずかに見開いた。
軽蔑されただろうか。
人々のため、世の中のために働く巫女が、
実は、
人並みの幸福と安心を欲しがっているだなんて……。
情けなくて、涙が次々に溢れる。
「解放してほしい……」
ぽろりと出た本音は、縁側にすべって、落ちた。
「……姫様……」
頭上から、博嗣の声がした。
その声は、どこまでも優しかった。
そして、その身体が、私の醜態を隠すように。
そっと、背中に腕をまわした。
「博嗣……!」
私はその胸に寄り添った。
博嗣の腕の力が、強まる。
本当はずっと、誰かにこうしてほしかった。
甘えていいんだよって、言ってほしかった。