短志緒
「熱湯を使うのは危ない」
という俊輔の反対を、
「気分を落ち着かせるためにどうしても飲みたい」
と押し切って、紅茶のフレーバーティーを淹れた。
俊輔はベッドのそばにあるテーブルの前で、落ち着かない様子で座っている。
お茶の入ったカップをふたつ、テーブルに置く。
「どうぞ」
「どうも」
いい香りのするこのお茶は、私の恐怖心と彼の緊張を解してくれる。
「俊輔。助けてくれて、本当にありがとう」
俊輔が来てくれなかったら、今頃私は……。
そう思うと鳥肌が立つ。
俊輔は真面目な顔をしてカップを置いた。
「いや……違う。俺が最初から彩子ちゃんを送っていけばよかったんだ。飲みすぎてたことには気付いてたのに、俺は振られた男が下心で近づいてるって思われたくなくて、そうしなかった。すげー後悔してる」
「俊輔は何も悪くないよ」
テーブルの上で、そっと彼の手を握る。
ドキドキしている。
握り返されると、胸がキュンと疼いた。
彼を秒殺で振った1ヶ月前の私をぶん殴ってやりたい。
「やべ……俺、今になって怖くなってきた」
俊輔がいつもの彼らしい情けない声をあげた。
「え、今さら?」
「アドレナリンが引っ込んだのかな。あーもー、ほんと無事でよかった」
さっきまるで別人のような彼を見たから、いつもの彼だと安心すら覚える。
「怖いなら、抱き締めてあげようか?」
あなたがさっき、してくれたように。
私が両腕を広げて告げると、俊輔は目を丸くした。
だけどその直後、ニヤリと口角を上げる。
「彩子ちゃん、顔真っ赤」
「うるさい。じゃあやめる?」
「いやいや、そこはお言葉に甘えさせてよ」