スイートポテト・フィロソフィア
「へ? あ、あぁ、ごめん」
先に席に戻ってた景に適当に謝ってから、あたしはイスを引いた。
***
「はじめまして。西園寺[さいおんじ]です」
そう微笑む男の人に、あたしは軽く頭を下げた。
綺麗に言い放ったその人は、いわゆる“友達の紹介”で会うことになった男の人だ。
相手の名前も聞かずに言われた通りの待ち合わせ場所に行って、少し緊張しながら待ちぼうけたあの時。
そうして出会った男の人は、それはそれは……何ともすごい人だった。
まず、格好。
ベージュのズボンをこんなに綺麗に履きこなせる若い人がいるんだ、なんて単純に感心した。
状況をゆっくりと整理していたら、待ち合わせ場所がお洒落なカフェやら何やらが集まってることで有名な町の駅だったことにも、遅ればせながら感心した。
そこに現れた人間が“西園寺”なんて名乗れば、尚更だ。
初対面の日のことを思い出せと言われたら、必要以上に構えた自分しかイメージできない。
さつまいも好きなんて到底離せないような、そんな緊張感があたしを取り囲んでいたことは、間違いなかった。
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