猫が好き!


 ところが真純は、無防備に見知らぬ男を招き入れる割に、驚くほどクールでガードが堅い。

 色々個人的な事を訊いてきたり、食事を作ってくれたり、自分に好意を示しているのだろうと思い、捕まえようとすると、スルリとすり抜けていく。
 まるで猫だ。

 逃げられると追いたくなるのは、犬の本能か、オスの性(さが)か、真純が進弥を拾ったのには何も裏がない事が分かり、気が付けば本気で捕まえようとしていた。

 皮肉な事に、あいつに真純の事を恋人だと勘違いされ、気付かされた。

 自分が捕まえる前に、あいつにも他の誰にも、真純を攫われたくなかった。


「やっと捕まえたと思ったのにな……」


 普通、二十五を過ぎた女は自分の年を言いたがらないのに、真純は免許証と共に実年齢を明かし、自分の方がうんと年上である事を主張した。

 几帳面で時間に厳しい真純は、進弥の事を世話の焼ける子犬だとしか思っていないようにも見えた。

 元々相手にされていなかったのかもしれない。

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