君に告げよう
いろんな思い出がたくさん詰まった僕の黒塗りの車。
そろそろ新しい車に買い換えたら?と周りの人間は言うけれど、手直ししては乗り続けている。
楽しい思い出なんて、ほとんど残っていない。
つらくて、悲しくて、腹立たしい思い出ばかりだ。
けれども僕は、この車に乗り続けて、過去のことを思い出す。
『……俺も忘れるから』
永輝くんはそう言ったけれど、僕は絶対に忘れない。
つらかった過去も、すべてを在りのままに記憶しておく。
それが、大切な人と過ごしたことの『すべて』だから。
一片もなくしたくない、思い出だから。
「――……姉さん」
高くて冷たい塀のむこう。
頑丈な檻がゆっくりと開いて、堅苦しい制服を着た刑務官に見送られるようにして姉さんが出てくる。