君に告げよう
――……そして、月日は流れていく。
【来来軒】
「あら、大将。どこ行くんだい?」
「あぁ、ちょっと出てくる」
「仕込みはもう、終わったのかい?」
「とっくに終わったよ」
あの日、高校生だった僕が叩いたこの店のドア。
気難しそうな大将は、スープ作りから仕入れまで、この店の経営に関わることすべてを僕に託して引退した。
常連客から『坊主』と呼ばれていた僕は、『大将』と呼ばれるようになった。
僕と一緒に相変わらずこの店で働いているおばちゃんも、『大将』と呼んでくれるけれど、時々、昔のクセで『遼ちゃん』と呼んでしまう。
店のドアを開けると、真冬の冷たい空気が肌を刺す。
僕はジャケットの襟をぐいと引き寄せて、首周りを包み込む。