お姫様は王子様を演じてる



「腕離してよ、僕は少し急いでるんだから」


「……黙って俺が食い終わるの待ってろ」



「絶対、いや」



「昨日と同じめに合わせてやろうか…?」



昨夜の出来事を思い出したのか澪の口元が少し緩む。


その様子を見て、頭に血が上った私はほぼ反射的に、澪の顔を思いっ切り殴ってた。



ガツッ……



人を殴った鈍い大きな音が出た割には澪は微動だにしない。



ただ、平然とした澪の口元から赤い血が一筋垂れる。



澪は舌でペロリとその血を舐めてから、手の甲で拭う


「次はあんなことにはならないし、あんたの言う通りになんかしない」



私が言うと澪はクッと小さく笑った。



まるで私が楽しいことを言っているみたいに…



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