お姫様は王子様を演じてる
「……じゃあ、どこまで強がれるか試してみようぜ」
そう言うと、澪は私の身体をひょいと担いで肩に乗せた。
足をバタバタと動かして必死に抵抗したけど、澪は涼しい顔をしたまま歩きだす。
「……ちょっ…何やってんの!!
兵藤っ!!助けて!!
助けてよ…」
「……おい、あんまりうるせえとお前が女だって兵藤に言うぞ」
低く小さい声だったけど私を黙らすには充分だった。
兵藤一樹は私の声が聞こえたらしくキッチンから顔を出すと、担がれている私を見て怪訝そうな顔をする。
「どうした上野?
トラブルか?」
心の中では、助けてって願っているのに声を出せない。
「……何でもねえよ。
2階に上がるから。
飯は置いとけ」
澪は私のかわりに返事をすると、振り返りもせず、担いだまま階段を上がりだした。
『た・す・け・て』
声を出さずに口パクで兵藤に伝えようとする。
兵藤はそんな私を見て閃いたような表情をした後、軽くうんうんと頷いた。
良かった、伝わった。
と、安心して一息ついたところで。
『が・ん・ば・れ』
口パクで兵藤一樹そう返した来た。
……全然伝わってない。