お姫様は王子様を演じてる




とうとう私は残り一枚、兵藤は二枚。



事実上のビリ決定戦…
私がここでダイヤエースを引けば勝ち。



ババを引いたらもうワンターン。



緊張で心臓が破裂しそうなくらいバクバクしてる。



澪が私にさせる罰ゲームなんて恐ろし過ぎて想像したくない。



ただのババ抜きのはずなのに有り得ないくらいの緊張感が漂う中、私は兵藤のカードに手をかけた。



「違う、上野!!
右を引くんだ!!」



私が今取ろうとしているのは左のカード。



兵藤さん?何を言ってらっしゃるの?



躊躇して手が止まる私に追い打ちをかけるよう兵藤が喋る。



「右だ!!右を引け!!」


いや、おかしいでしょ?
そんな事言ったら絶対右はババじゃないですか…



「どうせ、右はババなんですよね?
いくら何でもわかりやすすぎますよ…」



「そうか…そう思うなら左を引くがいい!!」



いや、兵藤…
一体貴方は何がしたいの?


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