甘いケーキは恋の罠
斜め前のキミ



――午前7時05分――


通勤ラッシュに巻き込まれないのは先月新たに開通した地下鉄のおかげだ。


といっても、人が全く居ないわけでもないバスの車内は少し息苦しい。


もう顔馴染みになりつつある乗客達を見渡しつつ、彼の姿を探す。


―――いた…。


人を惹き付ける独特の魅力のある彼は、密かにこのバスの「王子」と囁かれている。


現に私もその1人でわざわざ彼の時間に合わせてこのバスに乗る。


元々歩いても行ける距離にある会社までは運動のため自転車で通勤していたのだ。


その日はたまたまいつも乗っていた自転車をパンク修理に出しており、気まぐれでバスに乗ったのだった。


そこで彼を見かけた。



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