甘いケーキは恋の罠
しばらく去っていく男の子の背中を放心状態で見つめていると、隣から紙を覗き込んだらしいゆきが呟く。
「前田亮<マエダ リョウ>。メールだけじゃなく、電話番号まで書いてある……。」
「結構、みっちゃんに本気なんじゃない?」
そんなけんちゃんの言葉にこの紙をどうしようか悩んでしまう。
あまり知らない人に自分の連絡先を知られるのは抵抗があるが、無下にも出来ずそっと紙に視線を落とす。
「ゆき、けんちゃん、どうしよう…。」
このような経験の無い私は全くどうすれば良いか分からず2人に問い掛ける。
「うーん、あんまり気にしないでいいんじゃない?」
苦笑いで言うゆきにけんちゃんも頷いて同意している。
「そーそー、あいつが良からぬ奴だったら連絡しない方がいいしな。」
そう言ってけんちゃんは私の手からメールアドレスの書かれた紙を取るとぐしゃぐしゃに丸めて自分のポケットへと入れてしまった。
