恋の宝石箱《鳴瀬 菜々子のオムニバス・teenslove短編集》




お兄ちゃんが部屋を出て行きパタン、と閉まるドア。

「……あー…、びっくりした…。
……近いッて……。きゃあ……」

お兄ちゃんに触られた頬を押さえて呟く。

「…コドモって…。いっこしか違わないじゃん…」

………そう、きっと、普通ではない。
……実の兄によからぬ思いを抱く私の頭の中は。


お兄ちゃんの寝癖も、脱ぎ散らかした服も、……全部。
私だけが知っている。
と、言うのも、お兄ちゃんは一歩外へ出ると、キリリときまった優等生だから。

私達兄妹が通う高校の、生徒会長様なんてしてる。
笑っちゃうよね。
学校では彼は、容姿端麗、文武両道の非の打ち所がない人だと思われている。

………実際はだらしないただの高校男児なのだけれど。



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