チョコケーキ戦争
彼は今、巷で噂の「事件のおくりびと」と呼ばれている探偵だ。
そして、知る人ぞ知る甘党男でもある。
特にチョコレートの事になると、性格が変わってしまう。
「……」
ベルギー産となれば、さぞかし値段も張るだろう。
尚且つ、数量限定販売。
これはもう財布が泣くに違いない。
食費、家賃、光熱費などを引いた残りの金で買えるかどうか心配である。
そんなことを考えていると、事務所のドアが勢いよく開いた。
「こちはーっす!紘哉さん!」
声の主に、紘哉は慌てて机の中にチラシをしまい、文庫本を取り出した。
もちろん、カモフラージュのためだ。
「あれ?なんか元気ないんじゃない?」
「そうか?」
「うーん……勘違いかなぁ。やっぱり、そうでもなかった」