不遜な蜜月
(ううん、ありえない。そんなこと・・・・・・)
忘れてしまおうと決めたけれど、やはり浮かんでしまう。
「真緒?」
「あ、何?」
我に返り、真緒は顔を上げた。
「心配なら、松前先生のとこに行ってみたら?」
姉の言う松前先生とは、産婦人科の先生で、優しい雰囲気の女性だ。
「遅れてるだけ、だと思う」
「でも、心配なんでしょ? 何にせよ、行った方がいいと思うわよ」
菜緒の言葉に、真緒は目を伏せながら、頷いた。
あの夜から、4週間が過ぎた。
理人は会議用の資料に目を通しながら、チラリと時計に目をやる。
(会食の時間、だな)
ファイルを閉じるのと同時に、ノックの音が部屋に響いた。
「入れ」
「失礼します、社長。会食のお時間です」
現れたのは、青山 玲奈。
専属秘書は一臣だが、今日の会食には彼女が同行することになっている。